2012年4月18日

もう逃げ回ることなどない





















その日は彼が脱いだ服に顔を埋めて
彼の匂いに抱かれながら眠った。
(因みに、出会った頃の匂いとは変わっているということに最近気が付いた。)

夜中に目を覚ますと、
彼は私にしがみついて鼾をかいていた。

セックスもしないで
ただ色々話した後に疲れて眠った。

男と女、個室に二人きりなのに、
セックスをしなかった。
(このとき私はこの現実を真摯に受け止め、嬉しく思い、彼を信じようと思った。)


鋭利な彼の肩やパセティックな線と
無防備な寝顔、細くて固そうな足を見ながら
私のお腹に乗せられた重たい腕の心地よい感覚に酔い
タバコを吸ってお酒を飲んでいた。

起こしても起こしても起きる気配が無いので、
彼に布団をかけてあげてから暫くして私も眠りについた。

起きると5:00だった。

彼は起きていた。
私を見ていた。

TVにはお天気お姉さんが映っていた。
彼はチラリと彼女に目を向け
「絶対に、ヤリマンだよな」
なんて一言。

「…そう?解らないけど可愛い。」
と、返しておいた。

可愛いなんて言ったけれど、
顔は見ていない。

可愛いか可愛くないかは定かであったが、
私の知っているお天気お姉さんといえば、
皆藤…なんていう凄く可愛らしい女性だったが、
その日に映っていたのは彼女ではなかったのだけは確かだ。


彼は私を抱き締めて
「良いにおいするー。んー。」
と、甘えた。
私の匂いが好きなんだそうで。

それは私も同じだよ。
と、心の中でボソッと一言。

そのまま私たちはいつものように触れ合う。

『お前が可愛くて仕方ない。』とか
『好きだなァ。』
なんて平気で口にする彼が憎いのだが、
可愛いから許してあげることにした。

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